【授業情報】グラフィックデザイナー・大日本タイポ組合さんの特別講義を開催
2026/9/12
タイポグラフィをメインとしたグラフィックデザイナーとしてご活躍中の大日本タイポ組合さん〈https://dainippon.type.org/home/about.html〉をお招きし、特別講義を開催しました。聞き手は、本校講師の菅沼比呂志先生です。

講義では、大日本タイポ組合さんがこれまで手掛けてこられた数々のお仕事を、ユーモアを交えながらご紹介いただきました。
既存の文字の一部分だけを切り出したり、大胆に回転させたりすることで、誰も思いつかないような唯一無二のタイポグラフィが生まれていく——その制作過程を、実際の作品を見せながら解説してくださいました。会場では、見慣れているはずの文字が全く違う表情を見せる瞬間に、驚きの声が上がる場面も。

印象的だったのは、「文字そのものの形」ではなく「文字と文字の間にある余白や隙間」に注目するという視点です。普段私たちは文字の輪郭ばかりを追いがちですが、あえて文字以外の部分——ネガティブスペース——に目を向けてみると、そこに思いがけず面白い形が浮かび上がってくるのだといいます。「字を見るのではなく、字のまわりを見ること」。この発想の転換こそが、大日本タイポ組合さんならではのユニークな作品を生み出す土台になっているようでした。
さらに興味深かったのは、この「余白を見る」という視点が、文字の世界を飛び出して「景色の中をトリミングする」というアイディアにまで発展していったというお話です。街中の看板や建物の隙間、自然の風景など、日常のあらゆる景色の中に、文字のような形や意味を見出していく——タイポグラフィという枠組みを超えた、ものの見方そのものの拡張だと感じました。
一方で、こうした緻密で独創的な制作の裏側にありながらも、「とはいえ楽しんでやるのが良い」という言葉が印象的でした。技術やコンセプトを突き詰めることと、遊び心を持って楽しむこと。この両立が、長く第一線で活躍し続けられる理由なのかもしれません。

また講義の中では、タイポグラフィという表現そのものが時代とともにどんどん変化してきているというお話もありました。かつて「作字」といえば、世の中に存在しない文字をゼロから新しく作り出すことを意味していましたが、現在ではその言葉自体が「レタリング」——つまり既存の文字を装飾的にデザインする行為——を指すように、意味合いが変わってきているとのこと。言葉の定義そのものが移り変わっていく様子からも、タイポグラフィという分野が今なお生きた表現として進化し続けていることがうかがえました。
大日本タイポ組合さん、菅沼先生、ありがとうございました。